2012年5月9日水曜日

ヤード・ポンド法 - Wikipedia


ヤード・ポンド法は、英語圏諸国、2011年現在では特にアメリカ合衆国を中心に使用されている単位系である。

「ヤード・ポンド法」という名称は、長さはヤード、質量はポンドを基本となる単位としていることによる日本での名称である。英語では、大英帝国時代(アメリカも13植民地でその一員)に定められたことからImperial unit(帝国単位)と呼んでいる。アメリカ合衆国で使われている単位系はU.S. customary unit(米慣習単位)といい、歴史的経緯により同じ単位名称でも値が異なるものもある。本項では、イギリスの帝国単位とアメリカ合衆国の米慣習単位の両方について説明する。

ヤード・ポンド法は、西洋で古代から使われ変遷してきた単位の延長線上にあるものである。すなわち、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも、かつてはヤード・ポンド法と発祥を同じくする、それと似たような単位(ただし名称は言語により異なる)を使用していた。それらの国は早いうちにメートル法へ完全移行したため、20世紀までには、ヤード・ポンド法およびそれに類する単位系を常用する国は、主要国ではイギリスとアメリカ合衆国を残すのみとなった。

[編集] イギリス

イギリスの帝国単位は、1824年の度量衡法(Weights and Measures Act)によって初めて法的に定義され、以降改正が加えられた。この単位系はイギリスの当時の植民地および英連邦諸国でも使われたが、この時13植民地は既にイギリスから独立、アメリカ合衆国となり英連邦にも入っていなかったため、イギリスの度量衡法は導入されていない。

イギリスとアメリカ合衆国とで基本となる単位の値にわずかな違いがあったため、1958年にカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イギリス、アメリカの6か国による国際協定が結ばれ、SI単位系(メートル法)の単位によって定義された同じ値(1ヤード=正確に0.9144メートル、1ポンド=正確に0.453 592 37キログラム)を採用した[1]。この時点からヤード・ポンド法はもはやSI単位系なしには存在しえないこととなった。イギリスでは、上記の国際協定による定義は、1963年の度量衡法によって法定された。

イギリスでは1995年にSI単位系に移行し、ヤード・ポンド法の単位は一部を除いて2000年から使用を禁止しているが、現在でも「反メートル法運動」という、メートル法使用に反対する人たちがいる(Anti-metric movement)。

[編集] アメリカ

アメリカ合衆国は、1875年に締結されたメートル条約の原加盟国であり、以降、法律上はメートル法を公式の単位系としている。ヤード・ポンド法をcustomary unit(慣習的な単位)と呼んでいるのはそのためである。


シカゴの現在の時刻は何ですか

しかし、メートル条約加盟から1世紀以上たっているが、今日でもアメリカ合衆国では一般にはヤード・ポンド法の方が広く使用されている。1992年以降、日常的に使用する単位をメートル法(国際単位系)へ移行するための政府の取り組みもあるが、法的にはヤード・ポンド法の使用は禁止されていない。アメリカ合衆国でも、メートル法への移行に反対する運動が起きている。

今日、ヤード・ポンド法の使用が禁止されていないのは、アメリカ合衆国のほかミャンマー、リベリアのみである。ただし、リベリアでは民間主導でメートル法への移行が行われ、今日ではヤード・ポンド法はほとんど使用されていない。ミャンマーでも現在はメートル法が主流となっている。

アメリカ合衆国がいまだにヤード・ポンド法を使用しているため、メートル法に移行した国の多くでも、アメリカ合衆国の強い影響下にある分野(航空、宇宙分野など)に限定して、ヤード・ポンド法の使用を法的に認めざるを得なくなっている。また、それ以外の分野についても、ヤード・ポンド法の単位が使用されていたり、メートル法であってもヤード・ポンド法の単位の整数倍の値が使われていたりする。

[編集] 日本

日本では、明治42年(1909年)にヤード・ポンド法の使用が認められた。大正10年(1921年)に使用が禁止されたものの、戦後、再び使用が認められた。昭和34年(1959年)1月1日より計量法によりメートル法のみを使用することとなり、尺貫法とともにヤード・ポンド法の使用は禁止された。

ただし、例外として次の5つについてはヤード・ポンド法の使用が認められている。

  1. 輸出されるべき計量器(計量法9条2項)
  2. 航空機の運航に関する取引・証明(計量法附則5条2項1号)
  3. ヤードポンド法で表記されて輸入された商品の取引・証明(計量法附則5条2項2号)
  4. 日本国内の合衆国軍隊・国際連合軍隊に属する者が用いる場合(計量単位令6条1項2号)
  5. 自衛隊が武器の一部として使用する計量器(計量単位令12条1号ロ)

[編集] 長さ

ヤードが基本単位とされているが、実際にはフィートを元に組み立てた単位の方が多い。

  • 1バーレイコーン(barleycorn) = 1/3インチ = 約8.467 mm
  • 1インチ(inch, in) = 1/12フィート = 2.54 cm
  • 1フィート(foot (複feet), ft) = 1/3ヤード = 30.48 cm
  • 1ヤード(yard, yd) = 0.9144 m (定義)
  • 1ポール(pole) = 5.5ヤード = 5.0292 m
  • 1チェーン(chain) = 4ポール = 20.1168 m
  • 1ハロン(furlong) = 10チェーン = 201.168 m
  • 1マイル(mile, ml) = 8ハロン = 1760ヤード = 1.609344 km
  • 1リーグ(league) = 3マイル = 4.828032 km

[編集] 面積

長さの単位の平方(平方フィート、平方マイルなど)が使用されるが、それとは別の定義による以下の単位がある。


IRACを解釈する方法
  • 1ルード(rood, ro) = 1ポール×1ハロン = 1210平方ヤード(yd2) = 1011.7141056 m2
  • 1エーカー(acre, ac) = 1チェーン×1ハロン = 4ルード = 4840平方ヤード(yd2) = 4 046.856 422 4 m2

[編集] 容積

ガロンを基本の単位とする。ヤード・ポンド法では、液体用(液量ガロン)と穀物用(乾量ガロン)で異なるガロンを用いている(乾量単位・液量単位を参照)。さらに、イギリスとアメリカではガロンの値が異なる。イギリスでは液体用と穀物用の単位を統一しているので、全部で3種類のガロンがあることになる。さらに、それぞれのガロンの分量・倍量単位として、同じ名前の異なる単位が存在することになる。

以下に示すのは英ガロンによる値である。

米液量ガロンでは以下のようになる。

  • 1液量オンス = 29.5735295625 mL
  • 1パイント = 1/2クォート = 16液量オンス = 473.176473 mL
  • 1クォート = 1/4ガロン = 946.352946 mL
  • 1ガロン = 3.785411784 L(定義)
  • 1バレル = 31.5ガロン = 119.240471196 L

国際的に原油の計量に用いられるバレルは、42米液量ガロン(158.987294928 L)である。

[編集] 質量

ポンドを基本単位とする。質量の単位には常衡・トロイ衡(金に用いられる金衡)・薬衡の3つの系統がある。普段用いられるのは常衡による単位であり、トロイ衡・薬衡については「トロイ」「薬用」を単位名称の前につける(常衡であることを明示する場合には「常用」をつける)。どの系統でもグレーンの値は同じであり、ポンドがその何倍であるかが異なる。薬衡は今日ではほとんど用いられておらず、トロイ衡もトロイオンス以外は用いられていない。

ハンドレッドウェイトは100ポンドであることに由来する名称だが、イギリスでは間にストーンが挿入されたため、1ハンドレッドウェイトは112ポンドとなっている。アメリカでは今でも100ポンドである。その上のトンの値の違いは、ハンドレッドウェイトの違いによるものである。区別のため、イギリス(英トン)のものはlong/gross、アメリカ(米トン)のものはshort/netが単位名称の前につけられることがある。


ツインフォールズ、アイダホ州ニュースペーパー
  • 1グレーン(grain) = 0.064 798 91 g(正確に)
  • 1ドラム(drachm) = 1/16オンス = 1.771 845 195 3125 g(正確に)
  • 1オンス(ounce, oz) = 1/16ポンド = 28.349 523 125 g(正確に) 
  • 1ポンド(pound, lb) = 7000グレーン = 正確に 0.453 592 37 kg(定義)
  • 1ストーン(英)(stone) = 14ポンド = 6.350 293 18 kg
  • 1クォーター(英)(long quarter) = 2ストーン = 28ポンド = 12.700 586 36 kg
  • 1クォーター(米)(short quarter) = 25ポンド = 11.339 809 25 kg
  • 1ハンドレッドウェイト(英)(long hundredweight) = 4クォーター = 112ポンド = 50.802 345 44 kg
  • 1ハンドレッドウェイト(米)(short hundredweight) = 4クォーター = 100ポンド = 45.359 237 kg
  • 1トン(英)(long ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2240ポンド = 1016.046 9088 kg
  • 1トン(米)(short ton) = 20ハンドレッドウェイト = 2000ポンド = 907.184 74 kg

ヤード・ポンド法はメートル法同様、度量衡である。一方、メートル法の中にMKS単位系やCGS単位系などさまざまな単位系があるように、ヤード・ポンド法の中にもさまざまな単位系が(理論上は)ありうる。

ただしヤード・ポンド法の単位系はメートル法のようには混乱しておらず、基本的にFPS単位系(fps単位系)だけが使われている。そのため、度量衡と単位系をメートル法ほど厳格に区別する必要はない。

FPS単位系は、長さにフィート (foot)、質量にポンド (pound)、時間に秒 (second) を使う単位系である。組立単位はそれらを乗除して作られる。

ただしFPS単位系のバリエーションとして、質量のポンドに代えて力のポンド重を基本単位にする重力単位系がある。

なお、ヤード・ポンド法の長さの単位は伝統的にヤードが基準とされているが、FPS単位系での長さの基本単位はフィートである。メートル法の中にセンチメートルを基本単位とするCGS単位系があるように、この2つは違ってもいいのである。

MKS単位系やCGS単位系は電磁気を扱うためにさまざまな拡張がなされた(国際単位系もその延長上にある)が、FPS単位系にはそのような拡張はない。そのためヤードポンド法には基本的に電磁気の単位がなく、ヤード・ポンド法を使っていても電磁気に関してはメートル法を使ったり、「ボルト毎フィート」のような単位系をまたがった組立単位を使うことになる。

[編集] 日本でヤード・ポンド法が使われている分野

※正式には日本国内の商取引でインチやフィートなどの単位は使えないため、テレビ受像機などの商品などへの記載は「42型」などという表記をしている。


[編集] 電気製品

  • IC、LSI、関連電子部品(端子間隔でインチを単位としているものとミリメートルを単位としているものが混在している)
  • テレビ受像機、ディスプレイモニタ(ブラウン管や液晶などの表示部の対角寸法でインチ)
  • 固体撮像素子(その呼びに相当する大きさの撮像管の撮像面サイズ)
  • ディスクメディアの媒体の直径。12 in = 304.8 mm、10 in = 254 mm、8 in = 203.2 mm、7 in = 177.8 mm、5.25 in = 133.35 mm、3.5 in = 88.9 mm、2.5 in = 63.5 mm、1.8 in = 45.75 mm など。ただし、CDの 120 mm はメートル法である。
  • 磁気テープ(媒体幅でインチ。長さの単位ではフィート)。たとえばVHSはハーフインチ(1/2 in = 12.7 mm)。
  • コンピュータ関連の、コネクタなど多くの構成部品
  • 19インチラック

[編集] 自動車

  • アメリカ製自動車の、ネジなど構成部品
  • 自転車や自動車のタイヤ(ホイールの直径をインチで表す 例外的に「700C」と呼ぶ時はフランス規格で数字はメートル法準拠)

[編集] その他の工業製品

  • 一部の食品の容量および重量。1 US pt ≒ 473.176 ml は、アイスクリーム他、アメリカ占領時代の名残として沖縄に多くみられる。ジュース、ビールなどの350 cc 缶(アメリカンサイズ)は 12 fl oz ≒ 354.88 ml に由来。またバターで重量約1ポンドを包装したものが「ポンドバター」等という名称で売られている。
  • 映画用フィルム(媒体の長さをフィートで表す。幅はミリ)
  • 印刷関係(用紙のサイズ、ドットピッチ(dpi)等)。
  • トイレットペーパーのサイズ。標準的な幅 114 mm ≒ 4½ in、内径 38 mm ≒ 1½ in。
  • 軌間(鉄道の線路の幅)。イギリスから持ち込まれた技術なので、ごく一部を除きフィートが基準になっている。標準軌 = 1435 mm ≒ 4 ft 8½ in、狭軌 = 1067 mm ≒ 3 ft 6 in。
  • ジーンズなどのウエストサイズ(cm表示ではあるが、基本的にサイズは1インチ = 2.54 cm刻みで変えられており、それらをcmの近似値に換算表示している)
  • 拳銃の口径(100分の1インチ=0.254mmを単位として、100分の40インチ=40口径などと表現する)

[編集] スポーツ

[編集] 96">その他

  • 航空交通管制(飛行機の飛行高度をフィートで表示)
  • アメリカを発着する民間航空機の荷物重量制限(キログラムでも表示されるが、本来ポンド単位で決められている重量制限をキロ近似値換算したもの。50ポンド→23kg 70ポンド→32kgなど)
  • 航空会社のマイレージプログラム。ヤード・ポンド法を使用している(あるいは過去使用していた)国との間の国際線だけでなく、その他の国との間の国際線および国内線、さらに他の方法によるポイント加算も全てマイル単位に換算し積算。
  • 打楽器の鼓面の大きさ。(cmで表記されている物もあるが、インチ換算すると、きっちりした数字になるものもある。20cm→8インチ、51cm→20インチなど)
  • パイプオルガンのパイプの長さ(オクターブの表記としてフィートが使われている)

[編集]

These are our most popular posts:

メートル法 - Wikipedia

結局1837年に「1840年以降はメートル法以外の単位の使用を禁止する」旨の法律が出 され、公文書にメートル法以外の単位を使用した場合は ... 欧州に比較して米国では 政府が努力していないこともあってか、メートル法はほとんど普及しておらずヤード・ ポンド法が主流である。 ... 広義のメートル法に属する単位系には、以下のようなものが ある。 read more

『メートル法』についての検索結果 (11件目~20件目)

また、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなど英語圏の国では avoirdupoisと メートル法をどのように使い分けているのでしょ ... し、アメリカは(inch)を使用しています が、 ■フランス■ドイツ■イタリア■スペインではどのような表記を使用するのでしょうか ? read more

矢口十思夫の徒然よろず半旬記 : メートル法制定記念日に思う~現在と ...

2012年4月11日 ... メートル法があるからこそ,世界のどの国でも,身長1m73cm,体重63kgといえば どのような寸法の体型か理解して ... 宇宙ステーションなど,様々な国の人が共同作業し て建築・製造に当たる場合,国によって「尺貫法」,英米などで使用され ... read more

ヤード・ポンド法 - Wikipedia

ヤード・ポンド法は、英語圏諸国、2011年現在では特にアメリカ合衆国を中心に使用 されている単位系である。 ... である。すなわち、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも、 かつてはヤード・ポンド法と発祥を同じくする、それと似たような単位(ただし名称は言語 により異なる)を使用していた。それらの国 ... アメリカ合衆国は、1875年に締結された メートル条約の原加盟国であり、以降、法律上はメートル法を公式の単位系としている。 ヤード・ .... どの系統でもグレーンの値は同じであり、ポンドがその何倍であるかが異なる 。薬衡は ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿